共有物についての権利イラスト知人でお金を出しあって土地を買うというように、共同出資で一つの物を購入した場合、通常、その物は出資者全員の共有物になります。

複数人で一つの物を共有するとき、その共有物についてそれぞれの人が持っている所有権の割合を持分と呼びます。持分は、共有者の合意や法律の規定により定まりますが、各人が出資して共同で購入したような場合は出資額の割合に応じた持分となるのが一般的です。各共有者の持分がはっきりしないときは各共有者の持分は相等しいものと推定されます(民法250条)。

各共有者は、共有物の全部についてその持分に応じた使用をすることができます(同249条)。共有関係を解消しようというときはいつでも共有物の分割を請求でき(同256条本文)、共有者間で協議することになります。

共有物の分割方法には①現物分割、②代金分割、③価格賠償の3つがあります。
①は、共有物を物理的に分割する方法です。数個の共有建物が一筆の土地上に存在し、外形上一団のものと見られる場合、共有者はそれぞれ各個の建物につき単独所有権を取得することも現物分割として有効です(最高裁昭和45・11・6)。離れた複数の共有土地を一括して分割対象とし、各共有者が分割後の各不動産をそれぞれ単独所有するという現物分割も可能です(最高裁昭和62・4・22)。
②は、共有物を第三者に売却し、その代金を共有者間で分ける方法です。
③は、共有物の性質などから持分どおりに現物分割出来ない場合に、持分を上回る現物を取得する共有者が他の共有者に金銭を支払うことで調整する方法(部分的価格賠償)と、共有物を共有者のうちの一人または数人の所有として、これらの者から他の共有者に対して持分に相当する価格を賠償する方法(全面的価格賠償)があります。
①、②、③のいずれの方法をとるかは共有者の合意によります。

共有者間で分割の協議が調わないときは、裁判所に分割を請求できますが、裁判所による分割では現物分割が原則とされ例外的に競売による代金分割ができるとされています(同258条)。全面的価格賠償については、共有物の性質等の事情を総合的に考慮し、またその価格が適正に評価され、取得者に支払能力があるなど特段の事情が存するときに限り許されるとするのが判例です(最高裁平成8・10・31)。

令和2年5月27日福島民報掲載