契約不適合責任イラスト買主は、ビールを1ケース買ったら本数が足りなかったときは足りない分を追加するよう求め、本を買ったら乱丁、落丁があっときはないものと代えるよう求めるのが一般的であり、売主もそれに応じるのが通常でしょう。しかし、売買の目的物が不動産などのように特定したものであると、数量の不足、品質の不十分や使用上の不備不具合などがあっても数量の追加や代替物の給付を求めることができません。現行民法は売買の目的物に隠れた瑕疵(欠陥)があったとき、買主がその欠陥の事実を知らなかったときは損害賠償請求することができ、欠陥のために契約をした目的を達することができないときは契約を解除することができるとしています(瑕疵担保責任、民法570条、566条)。

来月1日から施行される改正民法では、この瑕疵担保責任の規定を削除し、代わりに契約不適合責任の規定を設け、引き渡された目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡しまたは不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができるとしています。ただし、売主は買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法とは異なる方法による履行の追完をすることができます(改正民法562条①)。不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は履行の追完を請求することができません(同条②)。買主が相当の期間を定めて履行の追完を催告し、その期間内に履行の追完がないときは、買主はその不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます(同563条①)。

また、契約不適合責任には損害賠償や解除についての規定がありませんが、契約不適合によって買主が損害を被ったときは、債務不履行の一般規定(改正民法415条)に基づき損害賠償の請求や契約の解除ができます。

現行の瑕疵担保責任追及には期間の制限があり、買主が目的物の欠陥の事実を知った時から1年以内に売主に対し損害賠償請求や解除をしなければなりません。改正民法の契約不適合責任は、買主が目的物の契約不適合を知ってから1年以内に売主に対し不適合の事実を通知さえしておけば、権利行使自体は債権の消滅時効の一般原則により不適合を知った時から5年以内にすれば足りることになります。

令和2年3月25日福島民報掲載