特別養子イラスト10月15日、目黒女児虐待事件の被害女児の父親に対し懲役13年の実刑判決が言い渡されました。心が痛む事件でしたが、保護者による虐待が原因で児童養護施設に入所している子は少なくなく、このような子の健全な養育のために特別養子縁組を成立させ家庭において養育するということが考えられます。

養子には普通養子と特別養子があり、いずれも実親子関係がない者の間に法的な親子関係を創設するものです(民法809条)。普通養子では養親子となろうとする当事者間の合意に基づき戸籍窓口に届け出ることにより養親子関係が成立し、成立後も実親との親族関係はそのまま存続します。養親子関係の解消(離縁)も養親と養子との合意のみで可能です(同811条)。

特別養子は、子の利益を目的として実親子と同じような関係を創設する制度であることから、特別養子関係成立により実親子関係は終了します。成立には家庭裁判所の審判を要し(同817条の2)、原則として、養親となる者は25歳以上で配偶者があり夫婦で養親となること、養子となる者は6歳未満であること、実親の同意があること、実親による監護が著しく困難または不適当であることその他の特別の事情がある場合において子の利益のため特に必要があることが成立の要件になります。養親による虐待があるなど養子の利益のため特に必要があると認められる場合に、家庭裁判所の離縁の審判があったときは離縁することになり、この場合のほか離縁をすることはできません(同817条の10)。

今年6月、特別養子制度の利用を促進する観点から、特別養子縁組の成立要件を緩和する方向で民法の改正(施行日は公布の日から1年以内)が行われました。本改正では特別養子縁組で養子となる者の年齢の上限を原則15歳未満まで引き上げました(改正民法817条の5①)。

さらに、手実親による養育状況、実親の同意の有無等について判断する審判、養親子間のマッチングに関する審判の二段階手続を導入しました(改正家事事件手続法164条、164条の2)。旧法下では養親となる者は、実親子による養育状況に問題ありと認められるか分からないまま、実親が特別養子縁組について同意を撤回する不安を抱きながら試験養育をするとの負担がありましたが、本改正によりこの負担が解消されました。

令和元年10月23日福島民報掲載