賃貸借にかかる根保証契約イラスト

民法は、個人による根保証契約のうち金銭の貸借または手形の割引によって負担よる債務が主たる債務に含まれる根保証契約(貸金等根保証契約)について書面または電磁的記録により極度額を定めなければ効力を生じないと規定していますが(民法465条の2)、継続的な売買取引にかかる代金債務や不動産賃貸借にかかる賃借人の債務を主債務とする個人による根保証契約について同条の適用はありません。

民法465条の2が極度額を定める必要があるとした趣旨は、保証人が負担すべき最大額を示すことで金銭的な面から責任の範囲を画し、保証人にとって不測の過大な保証債務を背負い込むことがないよう保証人の予測可能性を確保するとともに、根保証契約の締結時において保証の要否及びその必要とされる金銭的範囲について保証人に慎重な判断を求めることにあります。

この趣旨は貸金等根保証契約以外の根保証にも妥当すると考えられます。たとえば建物賃貸借契約の賃借人の債務について親族が根保証をした場合に、延滞賃料の請求だけでなく賃借人が故意や過失によって賃借建物を損傷したことによる損害賠償請求など保証人が予想を超える多額の保証債務の履行を求められることもあり、この場合も保証人の予測可能性を確保し、根保証の要否、金銭的範囲について慎重な判断を求めるのが相当でしょう。

そこで、来年4月1日施行される改正民法は、極度額の定めが無ければ根保証契約の効力を生じないとの規定の適用対象を貸金等根保証契約だけでなく個人が保証人となる根保証契約一般に拡大しました。

改正民法施行日より前に成立した契約には現行民法が適用されますが、施行日以後に成立した契約には改正民法が適用されます。

賃貸借契約に基づいて生じる一切の債務を主債務とする個人の連帯保証は根保証に当たり、改正民法施行後新たに根保証を求める場合は、書面または電磁的方法により極度額を定めなければその効力が生じないことになります。

賃貸借契約が更新されても、賃貸借契約にかかる根保証契約はそれに伴い自動的に更新されるというものではないので、改正民法施行後に賃貸借契約を更新する場合でも、根保証契約自体が改正民法施行前に成立している限り現行民法が適用され、あらためて極度額を定めた根保証契約として締結し直す必要はないものと解されます。

平成31年4月24日福島民報掲載