23 雇用

(1)労務の提供が中途で終了した場合の報酬

旧法には、労務の提供が中途で終了した場合に労働者が報酬を請求できるかについて明文の規定がありません。

新法は、使用者の責めに帰することができない事由によって労働に従事することができなくなったとき、または雇用が履行の中途で終了したとき、労働者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求できることを明示しました(新法624条の2)。

(2)期間の定めのある雇用の解除

旧法は、雇用の期間が5年を超え、または雇用が当事者の一方もしくは第三者の終身の間継続すべきときは、当事者の一方は5年を経過した後いつでも契約の解除をすることができるとし、解除するには3か月前までに解除予告をしなければならないとしています(旧法626条)。

新法は、雇用期間が5年を超え、またはその終期が不確定であるときは、当事者の一方は5年経過後いつでも契約の解除をすることができるとし、使用者が解除しようとするときは3か月前、労働者が解除しようとするときは2週間前までに予告をしなければならないとして、使用者と労働者で予告の期間に差を設けました(新法626条)。

24 請負

(1)仕事が完成しなかった場合の報酬

旧法は、請負の報酬は仕事の目的物の引渡しと同時に支払うこととしていますが(旧法633条)、仕事が完成しなかった場合に報酬が発生するかについて明文の規定がありません。

請負契約では原則として未完成の仕事に報酬は発生しないとされますが、判例は、割合的に可分な仕事について一部履行済みである場合に注文者が既履行部分の給付を受ける利益があるときは、特段の事情がない限り既に履行した部分についての請負人の報酬請求を認めています。

新法は、注文者の責めに帰することができない事由によって仕事を完成することができなくなったとき、または請負が仕事の完成前に解除されたとき、請負人が既にした仕事の結果のうち可分な部分の給付によって注文者が利益を受ける場合は、その部分を仕事の完成とみなすとし、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求できるとしました(新法634条)。

(2)仕事の目的物の契約不適合

1)瑕疵修補請求

旧法は、仕事の目的物に瑕疵があるときは、瑕疵が重要でなく修補に過分の費用を要する場合を除き、注文者は請負人に対し、相当の期間を定めてその瑕疵の修補を請求することができると規定しています。(旧法634条1項)。

新法は、目的物に瑕疵があるなど契約内容に適合しない場合の債務者の責任について、契約に基づく通常の債務不履行責任と同質なものとして構成しなおし、売買以外の有償契約についても売買の契約不適合責任の規定(新法562条以下)を準用することとしたため、請負人の瑕疵担保責任の規定である旧法634条、これに関連する同639条、同640条を削除しました。

2)契約解除

旧法は、瑕疵のために契約をした目的を達することができないときは、原則として注文者は契約の解除をすることができるとしていますが、仕事の目的物が土地の工作物であるときは、瑕疵があるために契約の目的を達することができない場合であっても解除することができないとしています(旧法635条)。土地の工作物は一般的に経済的価値が大きく、契約解除の結果土地の工作物を除去することから生じる社会経済的損失の大きさを考慮して注文者の解除権を制限するものと解されます。

新法は、債務不履行解除の規定において債務者の帰責事由を要件としないとしたことから(旧法543条、新法543条参照)請負契約の解除についての旧法635条本文の規定は、債務不履行解除の一般原則に基づく解除の規定と内容において重複するものとなります。また、重大な瑕疵により全く経済的価値、利用価値のない土地工作物については、旧法635条但書の前提を欠くことにもなります。そのような観点から、新法は旧法635条を削除しました。

3)契約不適合責任追及の期間制限

旧法は、請負人の瑕疵担保責任に基づく注文者の瑕疵の修補または損害賠償の請求および契約の解除は、仕事の目的物の引渡しから(引渡しを要しない場合は仕事が終了したときから)1年の期間内にしなければならないとし(旧法637条1項)、仕事の目的物が土地の工作物である場合は、一定期間経過した後に瑕疵が発見されることが少なくないという特殊性を考慮し、普通には5年、特に堅固な工作物については10年にその期間を伸長しています(同638条1項)。

新法は、注文者が契約不適合を知った時から1年以内に請負人に通知しなければならないとし(新法637条1項)、1年以内に通知があれば、履行の追完請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求および契約の解除といった権利行使は消滅時効の一般原則によることとしました。また、注文者は契約不適合を知った時から1年以内に通知すれば足りるので、土地の工作物の特殊性を考慮する必要はなく、旧法638条を削除しました。

4)注文者の破産手続開始

請負において、仕事の目的物の引渡しと報酬の支払いは同時履行の関係にありますが、仕事の完成と報酬の支払いでは仕事の完成が先履行の関係にあります。

旧法は、注文者の破産手続開始が決定したとき、請負人または注文者の破産管財人は契約の解除をすることができるとしていますが(旧法642条1項前段)、これは仕事の未完成の段階で注文者が破産すると、請負人は報酬全額の配当が見込めないのに報酬請求権を得るには仕事が完成するまで継続しなければならないという不都合を回避するためのものです。仕事が完成した後に注文者が破産した場合は、請負人の報酬請求権は既に発生し仕事を継続する必要もないことから、新法は642条1項に但書を加え、仕事を完成した後は請負人から解除できないとしました(新法642条1項但書)。

25 委任

(1)復受任者の選任

旧法は、受任者が復受任者を選任できるか、選任された復受任者の権限の範囲がどうなるかについて明文の規定がありません。

新法は、委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときに復受任者を選任することができることとし、復受任者は、委任者に対してその権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し義務を負うこととしました(新法644条の2)。

(2)委任事務を処理することができなくなった場合の報酬

旧法は、受任者の責めに帰すべき事由によって委任の履行が中途で終了し場合の受任者の割合的報酬請求権を認めていません(旧法648条3項)。

新法は、請負に関する新法634条同様、委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき、または委任が履行の中途で終了したときであっても、受任者は既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるとしました(新法648条3項)。

(3)報酬の支払時期

有償の委任契約は、委任事務の処理に対して報酬を支払うのが原則ですが、成功報酬のように事務処理によって一定の成果が達成されたときに、その成果に対して報酬を支払うものとすることもあります。

旧法は、事務処理の成果に対して報酬を支払う場合の支払時期について明文の規定がありません。

新法は、委任事務の処理による成果に対して報酬を支払うことを約した場合は、請負についての新法633条同様、成果の引渡しと報酬の支払いは同時履行の関係に立つこととしました(新法648条の2第1項)。成果が未完成の場合に既履行部分について報酬を請求する要件については、請負の規定である新法634条を準用するとしました(同条2項)。

(4)委任契約の任意解除

旧法は、委任者、受任者のいずれも自由に委任を解除することができ、相手方にとって不利な時期に解除したときは相手方に生じた損害につき賠償しなければならないが、解除にやむを得ない事由があるときは損害賠償も不要であるとしています(旧法651条)。

信頼関係を基礎とする委任関係においては信頼関係がなくなった当事者間の委任関係を維持する必要はないとの趣旨から、受任者の利益をも目的とする委任においてやむを得ない事由がある場合には当然解除することができ、やむを得ない事由がない場合でも委任者が同条の解除権を放棄したと解されない事情があるときは解除を認め、解除によって受任者に生ずる不利益については損害賠償により塡補すれば足りると考えられます。

新法は、委任の解除について、受任者の利益(専ら報酬を得ることによるもの除く)を目的とする委任を委任者が解除したときは、やむを得ない事由がある場合を除き、受任者の損害を賠償しなければならないとの規定を加えました(新法651条2項2号)。

福島の進路2019年4月号掲載