貸金等根保証契約イラスト

保証債務は主債務がなければ成立しえず、主債務が消滅すれば保証債務も消滅する関係にありますが、継続的な取引関係に基づき将来にわたって発生する不特定多数の債務を主債務として保証する契約を締結することもでき、このような保証契約を根保証契約と呼びます。通常の保証と異なり、根保証では主債務の額が増減変動し、それに応じて保証人の保証額も増減変動するところに特徴があります。

根保証契約が利用されるのは、企業の継続的運転資金借入の債務や継続的売買取引による債務についてその企業の役員個人が保証するという場合が典型ですが、不動産賃貸借契約において賃借人が負担する賃料債務や損害賠償債務など将来にわたって生じる一切の債務について賃貸人に対し保証するという場合も根保証にあたります。

根保証契約は保証の限度額(極度額)や主債務の元本が確定する日(元本確定期日)の限定がないと保証人の負担が際限なく拡大してしまうおそれがあることから、通常は契約時に極度額や元本確定期日を定めます。

民法は、一般の根保証契約について極度額および元本確定期日の定めを要件とするものではありませんが、金銭の貸借または手形の割引によって負担する債務(貸金等債務)を主債務とする個人による根保証契約をとくに貸金等根保証契約と呼び、貸金等根保証契約については書面または電磁的記録により極度額を定めなければ効力を生じないとしています(民法465条の2②、446条②、③)。

民法は、貸金等根保証契約の主債務の元本確定についても規定しています。元本確定期日の定めがある場合、契約締結の日から5年を超える日を期日とする定めは効力を生じないとし(同465条の3①)、元本確定期日の定めがない場合(5年を超える日を期日としたため元本確定期日の定めが効力を生じない場合を含む)、元本確定期日は契約締結の日から3年を経過する日としています(同条②)。また、契約締結の日から3年以内の日を元本確定期日とする場合を除き、元本確定期日の定めは書面または電磁的記録によってされなければ効力を生じないとしています(同条④)。

貸金等根保証契約において、元本確定期日前であっても主債務者または保証人が死亡したときには主債務の元本は確定します(同465条の4三号)。保証人の相続人は元本確定後の保証債務を相続することになります。

平成31年3月27日福島民報掲載