20.消費貸借

(1) 消費貸借の成立

旧法は、消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から基線その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずるとしており、目的物の引渡が消費貸借成立の要件となっていますが(旧法587条)、新法は、消費貸借の合意につき書面または電磁的記録がある場合には、目的物の引渡しを要せず契約が成立することとしました(新法587条の2)。

(2) 準消費貸借

旧法は、消費貸借によらないで金銭その他の物を給付する義務(旧債務)を負う者が、相手方とその物を消費貸借の目的とすることを準消費貸借としています(旧法588条)。
判例は、消費貸借に基づく返還債務を旧債務とする消費貸借を準消費貸借として認めていることから、新法は「消費貸借によらないで」の文言を削除しました(新法588条)。

(3) 利息

旧法は、消費貸借につき無利息を原則としています(旧法587条)。
新法は、特約がなければ、貸主は借主に対して利息を請求することができないとし、利息の特約があるときは貸主は借主が金銭その他の物を受け取った日以後の利息を請求できるとし、利息発生の起算日を元本の受領日としました(新法589条)。ただし、利息発生の起算日を、合意により元本受領日よりも後の日とすることは可能であると解されます。

(4) 貸主の引渡義務

利息付きの消費貸借は有償契約ですが、有償契約には売買の規定の準用があります。
新法は、売買における売主の契約不適合責任の規定(新法562条)において、目的物が種類、品質または数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は売主に対し代替物の引渡しを請求できることとしています。そのため、利息付きの消費貸借において物に瑕疵があったときは、貸主は借主に対し瑕疵がない物を給付する義務を負うとする旧法590条1項は内容が重複することになるため新法では削除されました。
旧法は、無利息の消費貸借において貸主の瑕疵担保責任を規定していますが(旧法590条2項後段)、新法は、無利息の消費貸借と同じく無償契約である贈与の担保責任の規定(新法551条)を準用することとしました(新法590条1項)。
旧法は、無利息の消費貸借において借主は瑕疵がある物の価額を返還することができるとしています(旧法590条2項前段)。これは同程度に瑕疵のある物を調達して返還することが困難であることから定められたものですが、同程度の瑕疵のある物の調達の困難さは利息の有無にかかわらないことから、新法は、利息の特約の有無にかかわらず、引き渡された物が種類または品質に関して契約の内容に適合しないものであるときは、借主はその物の価額を返還することができるとしました(新法590条2項)

(5) 期限前弁済

旧法は、借主はいつでも返還することができるとのみ規定していますが(旧法591条2項)、新法は当事者が返還時期を定めた場合であってもいつでも返還することができることを明示しました(新法591条2項)。
旧法は、期限前弁済により貸主の損害が生じた場合の借主の賠償義務について規定を置いていません。新法は、貸主が期限前弁済によって損害を受けたときは、借主に対しその賠償を請求することができるとしました(新法591条3項)。

21.使用貸借

(1) 使用貸借の成立、終了

旧法は使用貸借について消費貸借と同じく要物契約として規定していますが、新法は使用貸借を諾成契約とする規定に改めました(新法593条)。
旧法は、借用物の返還時期の規定を置いていますが(旧法597条)、使用貸借の終了時期についての明文の規定がありません。
新法は、当事者が期間を定めたときはその期間満了により、期間を定めなかった場合に使用収益の目的を定めたときは借主の目的に従い使用収益を終えたことにより使用貸借が終了することとしました(新法597条1項、2項)。借主の死亡により使用貸借が終了するのは旧法と変わりません(同3項、旧法599条)。

(2) 使用貸借の解除

旧法は、どのような場合に使用貸借の解除ができるかについて明文の規定を置いていません。
新法は、貸主は、使用収益の目的を定めた使用貸借の場合は借主がその目的に従い使用収益するのに足りる期間を経過したとき及び目的を定めなかったときはいつでも使用貸借を解除できるとし、借主は、いつでも使用貸借を解除することができるとしました(新法598条)。
さらに、書面によらない使用貸借において借主が借用物を受け取るまでの間は貸主は使用貸借を解除できることとしました(新法593条の2)。

(3) 原状回復義務、収去義務

旧法は使用貸借終了後の借主の原状回復権、附属物の収去権については規定していますが(旧法598条)、原状回復義務、収去義務については明文の規定がないため、新法は借主の原状回復義務、収去義務について明文化するとともに、借用物から分離することができない物または分離するのに過分の費用を要する物の場合は借主は収去義務を免れること、借主の責めに帰することができない事由による損傷について借主は原状回復義務を負わないこととしました(新法599条)。

(4) 損害賠償請求の期間制限

旧法は、借主による借用物の用法違反によって貸主に生じた損害の賠償請求は、貸主が返還を受けた時から1年以内にしなければならないとしています(旧法600条)。この損害賠償請求権は、借主の用法違反行為から 10 年の消滅時効にも服すると解されており、用法違反の時から 10 年以上使用が継続すると、貸主が借用物の返還を受ける前に損害賠償請求権が時効消滅してしまうことになります。
新法は、貸主が返還を受けた時から1年の除斥期間を経過するまでの間は時効は完成しないとすることでこの不具合を回避しました(新法600条2項)。

福島の進路2019年2月号掲載