質問

連帯保証人に対する時効更新(中断)があった場合、主債務者に対しどのような効力があるのでしょうか。

 

回答

1 民法改正による時効制度の変更と経過措置

令和2年4月1日から施行されている改正民法では時効制度について大きな変更がありましたが、時効の中断および停止について施行日前に改正前民法第147条に規定する時効の中断の事由又は改正前民法第158条から第161条までに規定する時効の停止の事由が生じた場合におけるこれらの事由の効力についてはなお従前の例によるとされています(平成29年法律第44号 附則10条2項)。したがって、時効の中断または停止事由とされている行為または事実の発生時期が改正民法施行日の前か後かにより、改正前民法と改正民法のいずれが適用されるかが分かれることになります。

2 時効の更新(中断)事由

改正前民法は、時効中断事由があったときに、それまでに経過した時効期間をリセットし改めてゼロから時効期間の進行が始まるとしていましたが、改正民法は時効中断の効力を「時効の完成猶予」と「新たな時効の進行開始(時効の更新)」の2つに分けて時効中断事由を整理しなおしました。

改正前民法は時効中断事由として①請求、②差押え、仮差押え又は仮処分、③承認を挙げています(改正前民法147条1号)。ここにいう請求とは、とくに裁判所が関与する手続きのことをいい、訴訟のほか仮執行宣言付きの支払督促、民事調停、破産手続きにおける債権の届出(裁判上の請求等)などがこれにあたります。

改正民法は、①請求(裁判上の請求等)、例えば訴訟であれば、訴訟継続中は完成猶予の効力があることとし、当該訴訟の判決等により終了し債権が確定することで時効更新の効力があることとしました(改正民法147条1項1号)。②のうち差押え(強制執行)については申立てにより時効の完成猶予の効力があることとし、手続きが終了したときに時効更新の効力があることとしましたが(同法148条1項1号、2項)、仮差押え及び仮処分については、手続きが終了したときから6か月間時効の完成猶予の効力のみを認めることとしました(同法149条)。なお、改正民法は、担保権の実行、民事執行法上の担保権の実行としての競売の例による競売、財産開示手続及び第三者からの情報取得手続について強制執行と同様の効力を認めています(同法148条1項2ないし4号)。③承認については時効更新の効力があることとしました(同法152条)。

3 時効更新(中断)の効力の相対効とその例外

時効更新(中断)の効力はその事由に関与した当事者とその承継人との間においてのみ 生じるとされており、これは改正前民法と改正民法とで変わるところはありません(改正前民法148条、改正民法153条)。この原則からすれば、主債務者に生じた事由は保証人には効力が及ばないことになりますが、例外的に主債務者との間に生じた時効の完成猶予・更新(中断)は保証債務の付従性により保証人にもその効力が及ぶものとされています(改正前民法457条、改正民法457条)。

一方、連帯保証人について生じた時効更新(中断)事由については、その発生時期が改正民法施行前か後かにより、主債務に対して効力が及ぶか否かの結論が変わります。

(1)改正民法施行前に時効中断事由が発生していた場合

改正前民法は、連帯債務者の一人に対する履行の請求は、他の連帯債務者に対しても その効力を生ずるとし(請求の絶対効、改正前民法434条)、連帯保証人には同条を準用するとしています(同法458条)。ここにいう「請求」とは改正前民法147条1号の時効の中断事由としての「請求」と同一であると解されています(大審院昭和13年12月8日判決)。

したがって、改正民法施行前に連帯保証人に対して訴訟を提起していれば、勝訴判決を得ることで連帯保証人の保証債務について時効中断の効力が生じるとともに、主債務についても時効中断の効力が生じることになります。

しかし、差押えは改正前民法147条1号にいう「請求」には当たらないと解されており(大審院大正3年10月19日判決、東京高裁昭和63年8月22日判決)、連帯保証人に対して差押えをしても連帯保証人の保証債務について時効中断の効力が生じるのみで、主債務について時効中断の効力が生じるものではありません。

(2)改正民法施行後に時効更新事由が発生する場合

改正民法は、連帯債務者の一人について生じた事由は他の連帯債務者に対してその効 力を生じないとし(改正民法441条本文)、連帯保証人については同条を準用するとしています(同法458条)。そのため、改正民法施行後にあっては連帯保証人の保証債務について時効完成猶予、更新の効力がある事由が発生したとしても、連帯保証人の保証債務について時効完成猶予、更新の効力が生じるのみで主債務については何ら効力を生じません。

もっとも、改正民法は、連帯債務者の一人について生じた事由について、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力はその意思に従うと規定しているので(同法441条ただし書)、債権者と主債務者の間で特段の合意があれば、その合意に従った効力を生じさせることができます。

したがって、債権者が主債務者との間で連帯保証人について生じた時効更新事由の効力が主債務者にも及ぶとする合意をしておけば、連帯保証人に対して訴訟を提起し判決を得るなど時効更新事由を発生させることで、主債務についても時効の更新ができるようになるだけでなく、連帯保証人に対する差押えによっても改正前民法の場合とは異なり主債務の時効の更新ができるようになります。

福島の進路2023年1月号掲載