質問

育児介護休業法は令和3年に改正され、令和4年から令和5年にかけて段階的に施行されるとのことですが、どのような改正がされたのでしょうか。

回答

育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児介護休業法)及び雇用保険法の一部を改正する法律が令和3年6月3日成立し、同月9日公布されました。

今回の育児介護休業法改正の趣旨は、出産、育児等による労働者の離職を防ぎ、希望に応じて男女ともに仕事と育児等を両立できるよう男性の育児休業取得を促進するとともに、職場全体の雇用環境整備を進めることにあります。

改正点は大きく分けて5つあり、これらは令和4年4月1日から令和5年4月1日まで段階的に施行され、改正対応のため就業規則の変更や労使協定の締結を要することになります。以下その施行日が早いものから内容を紹介します。

1 雇用環境整備の措置ならびに制度周知および休業取得意向確認の措置の義務付け

⑴雇用環境の整備

事業主は、育児休業、出生時育児休業(産後パパ育休、詳細は後述3)の申出が円滑に行われるよう雇用環境を整備することが求められます。具体的には、事業者は①雇用する労働者に対する育児休業、産後パパ育休に関する研修の実施、②育児休業、産後パパ育休に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)、③雇用する労働者の育児休業、産後パパ育休取得事例の収集および当該事例の提供、④雇用する労働者への育児休業、産後パパ育休制度と育児休業取得促進に関する方針の周知の4つの措置のいずれかを講じなければなりません(育児介護休業法22条1項各号)。いずれかの措置とありますが、複数の措置を講じることが望ましいとされています。

⑵制度周知および意向確認

さらに事業主は、本人または配偶者の妊娠、出産等を申し出た労働者に対し、①育児休業・産後パパ育休に関する制度、②産後パパ育休の申出先、③育児休業給付の制度および④労働者が産後パパ育休期間に負担すべき社会保険料の取扱いについて周知させるための措置を講ずるよう努めなければならず(同法21条の2第1項)、休業取得の意向確認のための面談等の措置を個別に講じなければならないとされました(同法21条1項)。配偶者には事実婚の場合を含むものとされます。

周知措置は労働者との面談のほか、周知文書の交付のほか、労働者が希望する場合はファクシミリや電子メール等によって行うことができます。

2 有期雇用労働者の育児取得要件の緩和

これまで、引き続き雇用された期間が1年以上で、その養育する子が1歳6か月に達する日までに、その労働契約が満了することが明らかでない有期雇用労働者は育児休業の申し出をすることができるとされていましたが、改正により雇用された期間にかかわらずその養育する子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが明らかでない有期雇用労働者は育児休業の申し出をすることができるようになりました(同法5条3項)。

契約が満了することが明らかでないか否かは、労働契約の更新がないことが確実であるか否かにより判断され、事業主が契約を更新しない旨明示していない場合は原則として労働契約の更新がないことが確実であるとは判断されないものと解されます。

上記1および2の改正は、令和4年4月1日からすでに施行されています。

3 出生時育児休業制度の創設

産後休業をしていない労働者は、子の出生の日から起算して8週間を経過する日の翌日まで4週間以内の期間を定めて休業することができるとする出生時育児休業(産後パパ育休)制度が創設されました(同法9条の2第1項)。産後パパ育休は通常の育児休業とは別の制度であり、産後パパ育休取得後に通常の育休を取得することができます。

産後パパ育休は合計で4週間以内であれば期間を分割して2回まで取得することができますが(同条2項)、休業の2週間前までに申し出る必要があり(同法9条の3)、休業期間を2回に分割する場合、その2回分の休業期間の始期および終期を初めにまとめて申し出る必要があります。

休業中は就業しないことが原則ですが、労使協定を締結している場合は、産後パパ育休中であっても労働者が合意した範囲で就業することができます(同法9条の5)。

4 育児休業の分割取得等

これまで、通常の育児休業は休業期間を分割して取得することはできませんでしたが、改正により2回に分割して取得することができるようになりました。通常の育児休業については休業の1か月前までに申し出る必要がありますが、2回に分割して取得する場合、取得の際それぞれ申し出れば足り、最初の取得時にまとめて申し出る必要はありません(同法5条2項)。

他の子の産前、産後休業、産後パパ育休、介護休業またはあらたな育児休業の開始で育児休業が終了した場合で、産休等の対象だった子等が死亡等したときなどの特別な事情がある場合は、子が1歳以降であっても育児休業を再取得することができるようになりました(同条3項、4項)。

また、育児休業の延長について、育休開始日が子の1歳、または1歳半の時点に限定されていましたが、配偶者が育児休業をする場合に限って開始日が柔軟化され、夫婦間で育児休業を途中交代することができるようになりました(同条6項)。

上記3および4の改正は、令和4年10月1日から施行されます。

5 育児休業取得状況の公表の義務付け

常時雇用する労働者が1000人を超える事業主は、育児休業等の取得状況を年1回公表することが義務付けられました(同法22条の2)。取得率の算定期間は直前の事業年度であり、自社のwebページなど誰もが閲覧できるようにする方法により公表することが想定されています。

この改正は、令和5年4月1日から施行されます。

福島の進路2022年10月号掲載