同一労働同一賃金イラスト同一労働同一賃金というフレーズをよく聞きますが、同一企業内において正規労働者と非正規労働者の間で不合理な待遇差の解消を目指すルールをいいます。短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(パート・有期法)8条は、事業主は、その雇用する短時間・有期雇用労働者の基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて、当該待遇に対応する通常の労働者の待遇との間において、当該短時間・有期雇用労働者及び通常の労働者の業務の内容および当該業務に伴う責任の程度、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情のうち、当該待遇の性質及び当該待遇を行う目的に照らして適切と認められるものを考慮して、不合理と認められる相違を設けてはならないと定めています。

同じ内容の業務を担当する正規労働者と非正規労働者とを比較して待遇差の当否を検討することになりますが、待遇差があるとしても労働者の能力・経験・業績・成果・勤続年数その他の事情を考慮して必ずしも不合理な待遇差とは認められない場合があります。

賞与や退職金は労働対価の後払い、功労報償といった多様な目的を持ち、このように多様な目的を持つと解されるものの待遇差については、事業主の裁量が尊重され組織再編や人員配置の見直しといった事業主側の都合をも考慮要素とすることになり、待遇差が不合理ではないと判断されやすいといえます。住宅手当や扶養手当などのようにその趣旨が一義的に明確であるものの待遇差については、その趣旨が非正規労働者についても当てはまるかぎり、待遇差は不合理なものと判断されやすくなります。

令和2年10月に出された5件の最高裁判決は、パート・有期法8条の前身である労働契約法20条が適用される事案において、賞与の不支給、退職金の不支給、私傷病による欠勤中の賃金及び求職給の不支給による待遇差を不合理とは認めず、年末年始勤務手当の不支給、夏期冬期休暇の不付与、私傷病による病気休暇中の賃金の不支給、祝日休の対象の相違、扶養手当の不支給による待遇差を不合理と認定しました。これらの判断は、同一労働同一賃金の運用について参考になりますが、待遇差を生じている項目によって不合理か否かが一律に定まるものではなく、待遇差を設けた具体的事情により事案ごとの判断結果は異なることになるでしょう。

令和3年11月24日福島民報掲載