相隣関係イラスト相隣関係とは、隣り合う土地の所有者間で通行や排水などの土地利用について権利を調整し合う関係を言います。令和3年4月21日成立した改正民法では相隣関係の現代化との観点から改正がありました。

現行民法は土地の所有者は境界付近において障壁、建物を築造または修繕するため必要な範囲内で「隣地の使用を請求することができる」としていますが(現行民法209条)、改正民法は、これらの場合に加え工作物の収去、境界標の調査、境界の測量、枝の切除の場合に「隣地を使用することができる」と改めました。隣地使用権者はあらかじめ使用目的、日時、場所、方法を通知する必要がありますが、事前通知が困難なときは使用開始後の通知で足りるとしました。使用の日時、場所、方法は隣地のために損害が最も少ないものを選ばなければならず、使用による損害に対しては償金の支払いを要します(改正民法209条)。

改正によっても、隣地所有者が立ち入りを拒むときは隣地使用権者は無理に立ち入ることはできず、裁判所に訴えて立ち入りを認めてもらうほかありません。

現行民法は隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、竹木の所有者にその枝を切除させることができるとし(現行民法233条)、自ら切除することは認めていませんが、改正民法は、竹木の所有者に枝の切除を催告したにもかかわらず相当の期間内に切除しないとき、竹木の所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき、急迫の事情があるときには竹木の枝を自ら切除することができるとしました(改正民法233条③)。

改正民法は、土地の所有者が他の土地に設備を設置し、または他人所有の設備を使用しなければ電気、ガス、水道水などの継続的給付を受けることができないときに必要な範囲内で他の土地に設備を設置し、他人所有の設備を使用する権利を明文化しました。設置、使用についてはあらかじめその目的、場所、方法を他の土地または設備の所有者、他の土地を現に使用している者に通知する必要があり、その場所、方法は他の土地または他人が所有する設備のために損害が最も少ないものを選ばなければなりません。設置、使用による損害に対しては償金の支払いを要します(改正民法213条の2)。

以上の改正は法律が公布された令和3年4月28日から2年以内に施行するとされています。

令和3年10月27日福島民報掲載