遅延損害金イラスト遅延損害金とは金銭債務につき支払期日に支払われなかったことにより債権者に発生した損害を賠償するために支払われるべき金銭をいいます。金銭債務とは金銭の給付を目的とする債務であり、売買代金債務、賃料債務、貸金債務のほか、債務不履行や不法行為に基づく損害賠償債務などがこれに当たります。

金銭は誰にとっても額面どおりの交換価値を有するという特徴があります。そこで、支払期日に支払いを得られなかった債権者には当事者の事情にかかわらず債権額に対する一定の割合の損害が発生するものとみなし、債権額に対する一定の料率と遅滞した期間により遅延損害金を算定することとしています。

民法はこの料率について、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によることとし、遅延損害金について法定利率を超える約定利率を取り決めているときはその利率によることとしています(民法419条①)。適用される法定利率の基準時について規定しているのは、改正前民法では法定利率を一律年五分としていたのを、令和2年4月1日施行された改正民法では年3%とし、この法定利率を3年ごとに見直し、一定の条件で利率を変動させることになったからです(同404条)。

遅延損害金を請求するにあたり、債権者は支払いが遅れたことによる損害の証明をする必要はありません(同419条②)。債務者は遅滞によって実際に損害を発生させたかどうかを問わず賠償義務を負うことになり、逆に債権者は遅滞によって約定利率または法定利率による算定額以上の損害を被ったとしても超過した分の賠償を受けることはできません。

金銭債務の不履行による損害賠償について債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができないとされます(同条③)。大震災により債務者が送金手続きをとれなかったなど債務者の責任となる事情がないときでも、支払いを遅滞した債務者は遅延損害金を支払わなければなりません。

遅延損害金は、利息と同じように元本に対する利率によって計算するところから遅延利息と呼ぶこともありますが、利息は金銭消費貸借において利息の約定がある場合にその約定に基づいて発生するものであるのに対し、遅延損害金は遅滞により債権者に損害が発生するものとみなし、その賠償として支払われるものですから、利息と遅延損害金とは全く性質を異にするものです。

令和3年9月22日福島民報掲載