遺産分割制度の見直しイラスト民法は、被相続人が遺言で禁じた場合を除き、共同相続人はいつでもその協議で遺産の全部または一部の分割をすることができるとしています(現行民法907条①)。遺産分割協議について期限がないことから、相続開始後遺産分割がされないまま長期間経過してしまうことが少なくありません。遺産分割の手続きとして具体的相続分の算定が必要になると、遺産の範囲や評価額の確定のほか、特別受益者(同903条)や寄与分(同904条の2)の有無等を調査し確定しなければなりませんが、権利関係が複雑化した相続人の間でこれらの調査、確定をするのは時間の経過とともに相続人にとって大きな負担になります。そのため、遺産分割に期間制限を設けて遺産分割を促進することが検討されてきました。

令和3年4月21日に成立し、同月28日に交付された「民法等の一部を改正する法律」により、相続開始の時から10年を経過した後にする遺産分割においては特別受益者および寄与分に関する規定を適用しない、ただし、相続開始の時から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産分割を請求したとき、または相続開始の時から10年の期間の満了前6か月以内の間に遺産分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6か月を経過する前に当該相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたときは、相続開始の時から10年を経過した後であっても特別受益者や寄与分の主張ができるとの規定が設けられました(改正民法904条の3)。

この規定は、相続開始の時から10年を経過した後に遺産分割の請求があった場合に家庭裁判所が遺産分割を実施する際には、特別受益者や寄与分の主張をすることができないという趣旨であって、遺産分割協議における当事者間の個別の合意で特別受益者や寄与分を考慮することを妨げるものではありません。

上記改正規定は施行日前に相続が開始した遺産分割についても適用されます。その場合ただし書きに「相続開始の時から10年を経過する前」および「相続開始の時から始まる10年の期間の満了前」とあるうちの「10年」は、「相続開始の時から10年を経過する時または改正民法施行時から5年を経過する時のいずれか遅い時」とされます。

公布の日から2年以内とされる施行日は現在のところ定められていません。

令和3年8月25日福島民報掲載