質問

近年、当社の取引先に合同会社の社名が見られます。これまであまり馴染みのなかった形態の会社ですが、株式会社とはどう違うのでしょうか。

回答

合同会社は平成18年施行の会社法で新たに設けられた会社形態です。会社法施行当初の平成18年度の合同会社設立件数は3,000社程度でしたが、その後利用が進み令和2年度には33,000社あまりの合同会社が新設されました。株式会社と比較して設立、経営など種々の点において相違がありますが、以下、両者を比較してみます。

1 会社の所有者と経営者

会社の所有者は出資者です。株式会社の出資者は株主と呼びます。合同会社は合名会社、合資会社とともに持分会社に分類され(会社法575条1項)、持分会社の出資者は社員と呼びます。

株式会社の出資者である株主は、株式会社の具体的な経営には当たらず、株主総会で選ばれた取締役が業務を執行します(同法348条1項)。これを所有と経営の分離と呼びます。現実に株主が取締役に就任していても、これは株主総会で選ばれた取締役が株主の一人であるというだけであり、株主の地位に基づき業務を執行するものでではありません。

合同会社では定款に別段の定めがある場合を除き社員が業務を執行するとされているところから(同法590条1項)、原則として所有と経営が一致し、出資者の意思をより迅速に業務に反映させ柔軟な経営が可能であるといえます。

一株でも譲渡制限を付けない株式を発行している会社を公開会社と呼び、公開会社など取締役会設置を要する株式会社(同法327条1項)では3名以上の取締役が必要になりますが(同法331条5項)、取締役会を設置しない株式会社では取締役は1名でも足ります(同法326条1項)。合同会社の社員は1名でも足ります。

株式会社の取締役の任期は通常2年以内とされ、公開会社でない株式会社では定款により10年以内に伸長でき、監査等委員会設置会社では1年とされるといったように機関設計に応じて任期が規定されているのに対し(同法332条)、合同会社の社員に任期はありません。

取締役が1名のみの株式会社の取締役が死亡しても会社は解散しませんが(同法471条)、社員が1名のみの合同会社の社員が死亡したときは会社は解散します(同法641条4号)。

2 出資者の責任

出資者の責任には有限責任と無限責任があります。有限責任とは会社の債権者に自己の出資額以上に自己の資産をもって弁済する責任までは負わないというものです。無限責任は会社の債権者に自己の出資額以上に自己の資産を持ちだしてでも全額弁済しなければならないというものです。

株式会社の株主は有限責任とされ(同法104条)、合同会社の社員も全員が有限責任とされています(同法576条4項)。なお、合名会社では社員全員が無限責任を負い、合資会社では無限責任を負う社員と有限責任を負う社員が混在します。

3 意思決定方法

株式会社では株主は持ち株数に応じた議決権を持ちます(一株一議決権)。会社の運営について株主総会で決議する場合、通常の事項については出席者の議決権の過半数の賛成が必要となり、定款の変更や組織変更などの重要な事項については出席者の議決権の3分の2の賛成が必要になります(同法309条)。

合同会社では出資の額にかかわらず社員一人につき一議決権を持ちます(一人一議決権)。通常の事項については社員の過半数の賛成が必要とされ、定款変更や会社の解散など重要な事項については総社員の同意が必要とされますが(同法637条、641条3号)、議決権割合を定款で変更することが可能です。

4 決算の公告義務

株式会社は計算書類を公告する義務を負いますが(同法440条)、合同会社は決算を公告する義務がありません。

合同会社でも計算書類の作成、保存義務があり(同法617条)、社員から計算書類書の閲覧、謄写の請求を受けた場合はこれに応じなければならないことは株式会社と変わりありません(同法618条)。

5 出資者の地位の移転

⑴持分の譲渡

株式は株主が自由に譲渡することができるのが原則であり(同法127条)、譲渡につき会社の承認を要することとする特別の定めをおくことができても(同法107条1項1号)、譲渡を禁止することはできません。

合同会社の社員も持分を譲渡することができますが、原則として譲渡するには他の社員全員の承諾を得なければなりません(同法585条1項)。定款で別段の定めをすることができ、譲渡の要件を緩和することも譲渡を禁止することもできます。

⑵相続

株主が死亡し相続が開始すると、株式は相続財産を構成し株主たる地位は相続人に承継されます。

合同会社では社員が死亡したからといって死亡した社員の相続人が持分を当然に相続するものではありません。死亡によりその社員は退社したことになり(同法607条1項3号)、社員の相続人は持分の払戻請求権を取得します(同法611条1項)。社員の持分自体を承継させたい場合は、相続人その他の一般承継人が持分を承継する旨を定款で定めておく必要があります(同法608条)。

6 利益の配当

株式会社では会社が得た利益(剰余金)について株主に対しその出資額により決まる持株数に応じて配当をしますが、持株数以外の要素を考慮した配当をすることはできません(株主平等の原則、同法109条1項)。

合同会社では社員は利益の配当を請求することができ(同法621条1項)、利益配当の請求方法及び利益配当の方法等については定款で定めることができるとされています(同条2項)。

 

以上のとおり、株式会社と比較して法律による制約が少なく、利益配当の割合や議決権の割合など社員の権利内容を定款で自由に定めることができるという定款自治の広範さが合同会社の特色といえます。

福島の進路2021年7月号掲載