任意後見制度のイラスト認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な本人のために、本人を保護し支援するのが成年後見制度です。成年後見制度には、本人が判断能力を喪失した後に家庭裁判所が後見人を選任する法定後見制度と、十分な判断能力を有するうちに、本人自身が判断能力が低下した場合に備えてあらかじめ後見人となる者を決めておく任意後見制度があります。

任意後見制度を利用するには、本人(委任者)が将来の後見人(任意後見受任者)との間で本人の生活、療養看護および財産の管理に関する事務の全部または一部を委託し、その範囲で代理権を与える任意後見契約(任意後見契約に関する法律2条1号)をします。任意後見契約は公正証書によってしなければならず(同3条)、任意後見契約公正証書を作成した公証人は任意後見契約の登記を嘱託します。

任意後見契約締結後、本人が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況になったとき、本人、配偶者、四親等内の親族または任意後見受任者の請求により家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、任意後見監督人が選任されると任意後見受任者は任意後見人となり後見事務を開始します。家庭裁判所は任意後見人および任意後見監督人の登記を嘱託します。後見事務は本人が亡くなるまで継続し、後見事務費用は本人の財産から支出します。任意後見人には本人の親族が就任することが多く、後見事務報酬が支払われない場合がほとんどです。任意後見監督人には弁護士などの専門職が選任されることが多く、家庭裁判所の定める監督報酬が本人の財産から支払われます。

任意後見人は任意後見監督人に対し後見事務の結果を報告し、任意後見監督人は任意後見人の事務を監督し、後見人の事務に関し定期的に家庭裁判所に報告します(同7条)。任意後見人に不正な行為、著しい不行跡、その他任務に適しない事由があるときは、家庭裁判所は任意後見監督人、本人、その親族または検察官の請求により任意後見人を解任することができます(同8条)。

任意後見契約が登記されている場合には、家庭裁判所は本人の利益のため特に必要があると認めるときに限り、後見開始の審判等をすることができるとされ(同10条①)、任意後見監督人が選任された後に本人が後見開始の審判等を受けたときは任意後見契約は終了します(同条③)。

令和3年5月26日福島民報掲載