監護者の指定イラスト未成年者は父母の親権に服し、婚姻中の父母は共同して親権を行います(民法188条)。親権者は、子の財産を管理し、かつその財産に関する法律行為について子を代表するほか(824条本文)、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負います(同820条)。

原則として親権者が監護権を行使しますが、親権者の事情で子の監護ができない場合は、実質的な子の保護のために例外的に親権者とは別に監護権のみを行使する監護者を定めることができます。たとえば、父母が離婚する場合に親権者を父と定めながら(同819条①、②)、監護者として母を指定することもあります(同766条①、②)。監護者には祖父母、父母の兄弟姉妹などの親族を指定することが可能です。

祖父母のような父母以外の第三者を監護者に指定できることと第三者が監護者の指定を求めて審判を申し立てることができるかとは別の問題であり、申立ての可否について下級審の判断は分かれていました。肯定例として祖母の申立てを認め祖母を監護者に指定した金沢家裁七尾支部平成17・3・11など、否定例として祖父母の申立てを認めなかった東京高裁平成20・1・30などがあります。

本年(令和3年)3月29日、この問題について最高裁が判断を示しました。

事案の概要は、離婚後実家に戻り自分の母親Aと共に子Bの監護をしていたCがBを置いて実家を出たためAが単独でBを監護するようになり、その後CはDと婚姻しDがBと養子縁組しましたが、事実上Bの監護を続けているAがC、Dを相手にAをBの監護者と指定するよう審判を求めたというものです。

1審の大阪家裁、2審の大阪高裁はいずれも民法766条1項を根拠に、事実上監護している祖母Aは孫にあたるBの監護者指定の申立権があるとしたうえで、AをBの監護者と指定するのが相当であると判断しましたが、最高裁は、事実上の監護者に申立てを認める規定はなく、子の利益を最も優先して考慮しなければならないとしても(766条①後段)、事実上の監護者に申立てを許容する根拠とはならないとして、Aに監護者指定の申立権はないと判断しました。

上記とは別の事件ですが、最高裁は同日、監護に関する処分として祖父母が孫に対する面会交流を求めた審判事件において、祖父母に申立権はないとの判断を示しました。

令和3年4月28日福島民報掲載