親族間の扶養義務イラスト直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務があります(民法877条①)。扶養義務を負う者を扶養義務者、扶養を受ける者を扶養権利者と呼び、扶養義務者と扶養権利者の関係により義務とされる扶養の範囲が異なります。親が自分の未成熟子に対して負う扶養義務は自分と同程度の水準の生活ができるようにする義務(生活保持義務)とされます。これに対して自分の親、祖父母などの直系尊属及び兄弟姉妹に対する扶養義務は、扶養義務を負う者の社会的地位、収入等に相応した生活をしたうえで余力のある範囲で援助する義務(生活扶助義務)とされます。

複数の子が親を扶養する場合、扶養義務者である子はそれぞれ平等に親の扶養義務を負いますが、子らの間でどのような順序で親を扶養するかは親を含めた当事者間の協議で決めることとされ(同878条)、生まれた順と扶養をすべき者の順序は無関係です。扶養の程度、方法についても当事者間の協議で決めることとされており(同879条)、扶養の具体的な内容は当事者同士の意向に委ねられています。

扶養義務の履行方法は、金銭面で援助する経済的扶養が原則と解され、定期払いによるのが一般的ですが、住居や土地の提供といった金銭以外の給付による扶養も考えられます。また、扶養権利者が同居、療養、介護等を望み扶養義務者がこれを承諾するのであれば、直接介護等の世話をする身上的扶養を扶養の内容とすることもできます。

当事者間で協議がまとまらない場合や協議をすることができない場合は、家庭裁判所に扶養に関する調停または審判を申し立てることができます(家事事件手続法244条、39条)。

調停手続では調停委員会が当事者から事情を聴取したり、必要に応じて書類などの提出を受けて事情を把握したうえで、扶養権利者が要する扶養の内容や扶養権利者の意向、扶養義務者の資力や経済状況、生活状況などを考慮して解決案を提示したり、解決のための助言をして双方の合意ができるよう話合いを進めます。調停が不成立となったときは自動的に審判手続に移行し(同272条④)、家庭裁判所は必要な審理を行ったうえで一切の事情を考慮して審判をします(民法879条、家事事件手続法73条)。最初から審判を申し立てた場合でも、裁判所の取扱いとして調停手続を先行させることがあります。

令和3年3月24日福島民報掲載