借地上の建物の賃貸借イラスト借地上の建物の賃貸借の目的物はあくまで建物であり、借地契約に借地上の建物の賃貸を禁止する特約がない限り、土地の借主は貸主の承諾なしに自由に借地上の建物を賃貸することができます。土地の借主が借地上の建物を第三者に賃貸したとしても敷地である土地の転貸には当たりません。

建物賃貸借契約終了に関して借主は借地借家法により手厚く保護されていますが、借地上の建物の賃借権は敷地の借地権の上に成り立つものである以上、敷地の借地契約が終了すると建物の賃借権はその存続の基礎を失うことになります。このような借地契約終了の場面において借地上の建物の借主が保護されるかについては、借地契約の終了事由により結論が異なります。

借地権の存続期間の満了によって借地契約が終了したときは、建物の借主は原則として建物から立ち退かなければなりません。ただし、建物の借主が借地権の存続期間が満了することをその1年前までに知らなかった場合に限り、裁判所は建物の借主の請求により、建物の借主がこれを知った日から1年を超えない範囲内において、土地の明渡しにつき相当の期限を許与することができるとされています(借地借家法35条)。

借地権の存続期間が満了して契約の更新がない場合、土地の借主は貸主に対し建物買取請求ができますが(同13条①)、土地の貸主が建物を買い取った場合は建物の貸主の地位を引き継ぐことになるので、建物の借主は立ち退く必要はありません。

土地の借主すなわち建物の貸主が債務不履行を原因として借地契約を解除されたときは、建物所有の前提となる借地権が消滅するので、建物の借主は立ち退かなければなりません。

借地契約が合意解除により終了したときは、特段の事情がない限り建物の借主は立ち退く必要がないとされます。最高裁は、土地の貸主は特約で禁止していない限り土地の借主が建てた借地上の建物を第三者に賃貸することを当然に予想でき、これを認容していると見るべきであるから、建物の借主は敷地を占有使用する権利を土地の貸主に対して主張しうるとして、土地の貸主は借地契約の合意解除の効果を建物の借主に対抗できないと判示し、土地の貸主から建物の借主に対する建物退去土地明渡請求を認めませんでした(最高裁昭和38・2・21)。

令和3年1月27日福島民報掲載