破産免責イラスト前回説明したとおり、個人の破産手続終了後に残った破産債権は当然に消滅するものではなく、その弁済義務を免れるためには裁判所の免責許可決定を得る必要があります。

破産者から破産手続開始の申立と同時にまたは破産手続開始決定確定後1か月内に免責許可の申立があった場合、裁判所が免責不許可事由のいずれにも該当しないと認めるときは、配当や廃止により破産手続が終了した後に免責許可決定をします(破産法252条①)。

破産法は、免責不許可事由として、①債権者を害する目的で財産を隠匿、損壊するなどして破産財団価値を減少させる行為、②破産手続の開始を遅延させる目的で著しく不利益な条件で債務を負担する行為、③特定の債権者に特別の利益を与えたり、他の債権者を害する目的で担保を供与したり弁済したりする行為、④浪費または賭博などの射幸行為、⑤詐術による信用取引行為、⑥帳簿の隠滅や偽造行為、⑦虚偽の債権者名簿を提出する行為、⑧裁判所の調査に協力せず虚偽の説明をする行為、⑨破産管財人の管財業務を妨害する行為をした場合、⑩以前の免責取得から7年以内に再び免責の申立をした場合を挙げています(同条①各号)。

免責不許可事由のいずれかに該当する場合であっても、裁判所は破産手続開始決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、裁量により免責許可決定をすることができるとされています(同条②)。

免責許可決定は官報に掲載されてから2週間が経過することで確定します。

免責許可決定により破産者は破産手続による配当を除き原則として破産債権についてその弁済を免れますが、例外的に免責の効果が及ばないとされている債権(非免責債権)があります(同253条①)。

破産法は、非免責債権として、①租税等の請求権、②破産者が害意をもって加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、③破産者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権、④夫婦間の協力扶助義務、婚姻費用分担義務、子の監護義務、親子間の扶養義務に基づく請求権、⑤雇用関係に基づいて生じた使用人の請求権および使用人の預り金の返還請求権、⑥破産者が知りながら債権者名簿に記載しなかった請求権、⑦罰金等の請求権を挙げています(同条①各号)。

令和2年11月25日福島民報掲載