自己破産イラスト資金繰りが悪化し、自己の資産や収入だけではすべての債務を弁済することができなくなった場合、債務整理をの手続をとることがあります。

債務整理には、債務者が各債権者と交渉する私的整理と、裁判所の手続による法的整理があり、法的整理の制度のひとつに債務者の財産を換価し債務を清算する破産手続があります。

債権者または債務者は破産手続開始の申立をすることができるとされていますが(破産法18条1項)、債務者自身が申し立てる自己破産が一般的です。

破産手続開始を申し立てると、裁判所は支払不能など破産の原因となる事実があると認めるときは破産手続開始の決定をします(同30条)。

破産手続が開始されると、裁判所が選任した破産管財人が破産者の財産を管理することになり、財産を換価して破産手続開始時に破産者に対し債権を有していた債権者に公平に弁済、分配(配当)をします。

破産手続開始時に存在した債権は財団債権と破産債権に分類され、財団債権は破産手続によらないで随時弁済を受けることができますが、破産債権は破産手続によって配当を受けます。財団債権となるのは破産管財人の報酬、破産者の財産の管理や換価など破産手続を進めるのに要する費用、破産手続開始前の原因にもとづく公租公課などで、破産債権となるのは破産手続開始前の原因に基づいて生じた債権で財団債権に該当しないものです。

財産を換価するといっても、破産者自身の生活もあるので、破産者が有する換価価値のあるもの全部を換価してしまうわけではなく、破産手続開始決定後に破産者が取得した財産、99万円までの手持ちの現金、法律上差押えが禁止されている財産などは破産者が自由に使用処分できる財産として保有することができます(同34条)。

破産手続開始時に破産手続を進めていくのに費用不足が明らかな場合は、開始と同時に手続廃止とされ(同時廃止)、破産手続が開始した後に費用不足になった場合も手続廃止とされます(異時廃止)。

破産手続終了後に残った破産債権は当然に消滅するものではなく、その支払義務を免れるために破産者は破産手続開始の申立と同時にまたは破産手続開始決定確定後1か月内に裁判所に免責の申立をする必要があります。裁判所の免責許可決定が確定すれば、破産手続終了後に残った破産債権について破産者は支払義務を免れることになります(同253条)。

令和2年10月28日福島民報掲載