遺留分制度の改正イラスト令和元年7月1日施行の民法(相続法)改正により遺留分制度の一部が改正されました。

遺留分とは、配偶者、子、直系尊属が相続人となる場合、被相続人が生前贈与や遺贈をしても相続財産の一定割合については相続人のために留保する制度です。遺留分の割合は相続人と被相続人の関係によって異なり、直系尊属のみが相続人である場合は3分の1、それ以外の場合は2分の1になります(民法1042条)。

たとえば相続人として配偶者と子2人がいる場合、被相続人が相続財産全部を配偶者に相続させる遺言をしても、子はそれぞれ遺留分権を行使すれば、遺留分(相続財産の2分の1)に子の法定相続分である4分の1を乗じた8分の1相当の相続財産そのものを配偶者から取り戻すことができます。

改正前は、遺留分を侵害された相続人は、侵害している者に対し遺留分減殺請求をすることにより侵害された遺留分に相当する相続財産そのものを取り戻すことができるとされていましたが、改正後は、遺留分侵害額請求として侵害された遺留分の額に相当する金銭の支払いを請求することができるとされました(同1046条①)。

遺留分侵害額請求権を行使するかしないかは侵害された相続人の自由です。

遺留分侵害額請求権は、遺留分権利者が相続開始および遺留分を侵害する贈与または遺贈があったことを知った時から1年で時効により消滅します。相続開始や贈与、遺贈を知らなかったとしても、相続開始の時から10年で時効により消滅します(同1048条)。

遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とされます(同1043条)。ここにいう贈与には、相続開始の前1年間にした贈与、当事者双方が遺留分権利者に侵害を加えることを知ってした贈与、および相続人に対する生前贈与が当たります。相続人に対する生前贈与について、改正前は、贈与がなされた時期を問わず遺留分を算定するための財産の価額に加算しましたが(最高裁平成10・3・24)、改正後は、婚姻もしくは養子縁組のためまたは生計の資本とするための贈与で、相続開始の前10年間になされたものに限って加算します(同1044条③)。

上記の遺留分制度の改正は、改正法施行日である令和元年7月1日以後に亡くなった人の相続について適用されます。

令和2年8月26日福島民報掲載