自筆証書遺言書保管制度イラスト令和2年7月10日から、法務局における遺言書の保管等に関する法律(遺言書保管法)が施行され、自筆証書遺言書保管制度の運用が始まっています。この制度を利用すると、遺言書を遺言書保管所(法務大臣が指定する法務局)に保管することができるので(遺言書保管法2条)、遺言書の紛失や毀棄の心配がなくなるほか、遺言者死亡後の検認手続が不要になる(同11条)、法令の様式に適合しない自筆証書遺言は遺言書保管官が申請を却下するので、様式に不備がある場合は保管申請の時点で判明するなどのメリットがあります。遺言内容の妥当性については遺言書保管官は関知しないので、遺言者は保管申請前に弁護士や司法書士など専門家に相談しておくのがよいでしょう。

申請書類の提出は遺言者自ら遺言書保管所に出頭してする必要があり、郵送や代理人によってすることはできません(同6条④)。申請先は、遺言者の住所地、本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所の遺言書保管官であり(同4条③)、保管申請には1件につき3,900円の手数料がかかります。

申請手続が終了すると遺言者は保管証を交付されます。この保管証の写しを相続人、受遺者、遺言執行者などに渡しておけば、遺言書保管の事実を明らかにすることができます。遺言書保管の事実を相続人などに伝えておかないと、相続開始後、相続人などは遺言書保管所に保管された遺言書の有無を確認することから始めなければならなくなります。

誰でも特定の遺言者について遺言書作成年月日、保管場所、保管番号などの事項が記載された遺言書保管事実証明書の交付を請求することができます(同10条)。請求にかかる遺言書が保管されていない場合または請求者が保管されている遺言書と関係のない者である場合は、保管されていない旨の証明書が交付されます。遺言書が保管されている場合は、遺言の対象となる相続人などが遺言書情報証明書の交付を受けるか、遺言書を閲覧してその内容を確認することができます(同9条①、③)。

遺言書情報証明書を交付し、または遺言書を閲覧させた遺言書保管官は、交付、閲覧申請をした相続人以外の相続人および当該遺言書にかかる受遺者、遺言執行者に対し当該遺言書が保管されている旨を通知します(同9条⑤)。

令和2年7月22日福島民報掲載