消滅事故と民法改正イラスト令和2年4月1日から改正民法が施行されますが、消滅時効について大きな改正があります。

現行民法は、消滅時効の一般原則として債権は10年間行使しないときは消滅するとしています(民法167条①)。改正民法は、債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または権利を行使することができる時から10年間行使しないとき、いずれか先に期間を経過した時点で消滅するとしました(改正民法166条)。売買代金のように契約に基づき発生する債権は、債権者が権利を行使することができることを知った時と権利を行使することができる時は一致するのが原則ですが、債務不履行による損害賠償請求権、解除権などの債権は、これらが一致しないことがあることから、権利を行使できることを知った時から5年との規定を置いたものです。

現行民法は、医師の診療報酬は3年、小売商人の売掛金は2年、運送賃は1年などと職業別の短期消滅時効の規定を設けていますが(民法170条~174条)、改正民法はこれらを全て削除し、知った時から5年、行使できる時から10年の一般原則に従うこととしました。

 現行民法において、時効の中断とは進行中の時効につき権利者が裁判上の請求をするなどして中断事由が生じた時点でそれまでの進行をリセットして、また最初から時効の進行を始めるものです(民法147条等)。時効の停止とは、権利者が天災などにより時効を中断することができないときに、時効完成を一定期間延長することで権利者に時効中断の機会を与えるものです(同161条等)。改正民法は、現行民法の中断事由を、時効完成を妨げる「完成猶予」と時効の期間をリセットする「更新」とに構成し直しました。たとえば、現行民法で時効の中断事由とされる裁判上の請求について、裁判が終了するまでの間は時効の完成猶予とし、確定判決により権利が確定したときは裁判終了時から新たに時効の進行を始める(更新)としました(改正民法147条)。現行民法において時効停止事由とされているものは、すべて完成猶予事由になります。さらに、当事者間で権利に関する協議を行う旨の書面又は電磁的記録による合意をすることで、時効の完成を猶予するという制度を新設しました(同151条)。

時効中断、停止に関する改正は取得時効も対象になります。

令和2年1月22日福島民報掲載