他人の土地を利用するには土地所有者と賃貸借契約を締結するのが一般的ですが、地上権を設定するという方法もあります。

地上権とは、他人の土地において工作物又は竹木を所有するためその土地を使用する権利であり(民法265条)、土地所有者が利用者のために設定するものです。同条の工作物とは、家屋に限らず電柱やトンネルといった地上、地下の設備一切をいいます。竹木についてとくに種類の制限はありませんが、稲や果樹などの作物を栽培する場合は、土地を耕作する権利である永小作権の設定となります(同270条)。

地上権は物に対する権利(物権)であることから、地上権者は土地所有者の承諾がなくとも地上権を第三者に譲渡することができます。土地所有者の承諾なしにその土地を第三者に賃貸することもできます。これに対し、土地賃貸借では賃貸人の承諾がない限り、賃借権を譲渡したり、その土地を転貸したりすることはできません(同612条)。

賃貸借では賃料の支払は必須ですが、地上権では無償とすることができ、有償とする場合の地代の支払いは一時払い、定期払いのいずれでもかまいません。

地上権の存続期間について民法に規定はなく、原則として長期、短期とも制限なく設定することができます。ただし、建物所有を目的とする地上権については借地借家法が適用され、存続期間の下限は30年とされます(借地借家法2条1号、3条)。

地上権者はいつでも地上権を放棄できますが、地代を支払うべきときは、1年前に予告をするか、期限の到来していない1年分の地代を支払わなければなりません(民法268条①)。

賃貸借では、賃料不払いの債務不履行により賃貸人は賃貸借契約を解除することができますが、地上権では、地上権者が引き続き2年以上地代の支払を怠ったときは、土地所有者は地上権の消滅を請求することができるとされています(同266条、276条)。

地上権も土地賃借権も、いずれもその登記を備えることで第三者に対抗することができますが(同177条、605条)、その登記がなくても、建物所有を目的とする場合はその土地上に登記を備えた建物を所有することで第三者に対抗することができるとされているので(借地借家法10条①)、自ら建物の所有権保存登記をすることにより土地に対する権利を保全することができます。

平成31年2月27日福島民報掲載